理学療法

運動学習理論とは?【運動学習をわかりやすく解説】

ヒトが新たな動作や動作を修正することを、“運動学習”と呼んでいますが、

運動学習はどのように生じているのでしょうか?

現在では小脳や大脳基底核の話が中心となり、

さまざまな場所で解説されていると思います

今回は主要な運動学習理論を3種類解説していきたいと思います

こんなあなたにおすすめ

運動学習に興味がある

仕事がセラピスト

運動学習がいまいちわからない

運動学習とは?

まずは運動学習の定義についておさらいしておきます

運動学習とは熟練した行動を作り出す能力における比較的永続した変化へと続く練習もしくは経験に関連する一連の過程

Schmidt RA,Lee TD.Motor control and learning:a behavioral emphasis

と、運動学習は上記のように定義されています

また、

運動学習では、ある特定の運動の正確性や効率性を高める必要があり、知識を得ただけでは運動スキルを習得することはできない

長谷 公隆:運動学習理論に基づくリハビリテーション

と、されています

どのように関節を動かし、どのタイミングで筋収縮をさせるべきか…

などということを頭で理解(知識を得る)していても、

実際に効率よく正確に運動させることができない限りは”運動学習した”

とは言えない、ということです

運動学習には段階がある

運動学習のスキル獲得には段階があるといわれています

  1. 認知段階
  2. 連合段階
  3. 自動化段階

第一の認知段階では、

うまく機能するものは保持、

うまく機能しないものは破棄、

というように動作の取捨選択をしています

この時期により多くの戦略が試され、効果的な戦略を選択しています

第二の連合段階では、

課題のための最良の戦略を選択するようになり、スキルを磨き始めます

この段階では、遂行能力の変化は少なく、改善もゆっくり進んでいきます

第三の自動化段階では、

スキルの自動化とその遂行能力にあまり注意を要求しない段階となります

“無意識にできる”に近いものがあります

運動学習理論

運動学習理論は大きくわけて三種類あります

  • 閉ループ理論
  • 開ループ理論
  • スキーマ理論

それぞれをすこしずつ解説していきたいと思います

運動学習理論①-閉ループ理論

閉ループ理論とは、1971年にAdamsによって提唱されました

運動スキルの習得に感覚フィードバックが必要であり、記憶痕跡・知覚痕跡の2つの運動プログラムに基づいて運動学習が進められる

Adams JA: A closed-loop theory of motor learning.

上記の運動学習理論が一番最初に提唱されました

閉ループ理論は、

運動を行う際に、以前の運動の記憶(記憶痕跡)と現在進行中の運動のフィードバックと運動結果の誤差が認識され(知覚痕跡)、運動学習が遂行されていきます

過去に経験した、50m先にボールを投げるという投球動作をイメージした時に、

まずは、記憶痕跡から運動を生成するための過去の記憶が想起されます

その後、実際にボールを投げてみる(現在進行中の運動のフィードバック)

投げた結果、45mまでしか投げられなかった(運動の結果)

50m投げるつもりが45mしか投げられなかった(運動の結果の誤差(知覚痕跡))

という流れになります

しかし、閉ループ理論には問題があり、

  • 新たな運動プログラムの学習過程を説明できない
  • 運動の数だけ存在する運動プログラムが脳に記憶されなくてはいけない

という問題がありました

運動学習理論②-開ループ理論

二つ目の運動学習理論は開ループ理論です

開ループ理論は、

フィードバック機構による修正に依存した閉ループ理論に対して、開ループ理論ではフィードバックを活用する時間はない。そのため、運動は事前に計画され、感覚情報の関与を最小にして実行される

Schmidt RA: Motor Learning & Performance.

と、定義されています

野球の打者が、ボールを打つ時をイメージしましょう

ボールが来たら打者はボールを打ち返すために、

バットを振りますが、バットを振ったらその運動はバットを振り終わるまで、

運動が終わりません

この間に、ボールとバットの位置の誤差をフィードバックしている余裕はありませんので、

開ループ理論ではフィードバックを用いません

運動が一度遂行されたら、運動が完了するまで遂行する

というのが、開ループ理論です

しかし開ループ理論にも問題点があり、

画一的なパターンの遂行を行うため、新規の運動・予期できない事態に対しては効果的な対応が困難です

運動学習理論③-スキーマ理論

上記2つの問題点を補うように提唱されたのが、スキーマ理論です

スキーマ理論では、スキーマとい一般化運動プログラム(Generalized Motor Program:GMP)が用いられます

スキーマとは、

ある運動を行ったことによって生じた結果と、その運動を行う際に使用した運動のパラメータの関係

GMPとは、

ボールを投げる格好や歩く格好といった抽象的な運動を引き起こすプログラム

大橋ゆかり:セラピストのための運動学習ABC

として定義されています

スキーマ理論では、

ボールを○○m投げる、という運動のプログラムが存在しており、

この運動プラグラムのおかげで脳の記憶容量については問題がなくなりました

さらにスキーマがあることで、運動のパラメータのフィードバックもされるため、

新規の運動野・予期できない事態に対しても対応が可能となります

そのため現在の運動学習理論はスキーマ理論で解説されれることが多いかと思います

運動学習理論とは?【運動学習をわかりやすく解説】について、おしまい

今回は運動学習理論の主要な3種類を軽く解説しました

スキーマ理論は再生スキーマや再認スキーマなどもありますので、

今後も運動学習シリーズとして、少しずつ解説していきます

もし何かあれば、問い合わせやTwitter DMからお気軽にご質問をどうぞ

 

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ぜひ一読ください

参考文献

Schmidt RA,Lee TD.Motor control and learning:a behavioral emphasis

長谷 公隆:運動学習理論に基づくリハビリテーション

Adams JA: A closed-loop theory of motor learning.

大橋ゆかり:セラピストのための運動学習ABC

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