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痛みがなければスポーツ復帰してもいいのか?
部活・趣味なりスポーツ復帰に向けてリハを行っている方いますよね?
どの時点でどの程度許可して、復帰させるのか結構悩みます。
選手たちは早期復帰を望んでいますが、
早期復帰させたことにより、再受傷・他部位の受傷
を繰り返しては意味がありません。
“痛みがなければ完全復帰”
と、言われたことがありますが、それでいいのでしょうか?
そこで、今回はReturn to playについて考えてみたいと思います。
組織損傷から考えるスポーツ復帰
筋損傷
筋損傷にもさまざまなものがあります。
・筋挫傷
・筋攣縮
・肉離れ…etc
外傷か障害かによって大別するのがいいのではないかと考えています。
外傷であれば疼痛消失はひとつの目安であると思います
が、
安静期間が長期となれば当然不動による有害作用があるわけです。
それを考慮して復帰させる必要があると思います。
障害であれば、繰り返されるメカニカルストレスが原因となる為、
疼痛消失を目安にしても、動作修正を行わない限り再受傷すると考えています
まずこれが、痛みなし=完全復帰を否定する理由の一つです
靭帯損傷
関節内靭帯か、関節外靭帯かによっても異なります。
関節内靭帯である場合は同様の期間であっても、関節外靭帯と比較して回復の程度が緩やかです。
これは、滑液による細胞増殖抑制が関与しているのではないかと言われています(Andrish J , et al : Effects of synovial fluid on fibroblasts in tissue culture.)

靭帯損傷では、疼痛消失を目安に復帰をすると、
再損傷しやすい期間での復帰となることがあります。
疼痛があった時期は活動量が減少するため、廃用性筋萎縮を生じうると
考えています。
当然、筋力には左右差が生まれますし、
筋持久力も低下しているはずです。
その状態で、”痛みないから完全復帰許可!!”
ってしたら、再受傷すると思うんですよ。
これが二つ目の、
痛みなし=完全復帰を否定する理由
修復過程から考えるスポーツ復帰
筋・靭帯ともに創傷治癒過程は同様の過程をたどり、
炎症期・増殖期・再構築期
に分けられます。
再構築期は数か月から数年を要すると言われています。
筋・靭帯が完全に修復するのを待つわけにはいきません。
それぞれの時期に段階的に負荷をかけていかないといけません。
炎症期
基本的には安静ですね。メカニカルストレスが加わらないように。
患部のアイシングと患部外TRをメインに進めていきます。
できる限り受傷前と同レベルで、左右差が生じないよう
を、肝に銘じています。
増殖期
資料によっては、ここは亜急性期となっているものもあります。
損傷発生後14~21日程度が目安です。
この時期は炎症が軽減をしてきていますので、
疼痛に合わせて患部TRを行っていきます。
耐えられる範囲で。
OKCもCKCも、どっちも。可動域制限が解消していることが前提です
増殖期の特徴として、
産生された未熟な結合組織は非薄で配列が不規則、
組織は非常に脆弱であり過負荷で容易に傷害されるが、
その組織に標準的な方向に適度な張力を負荷することによって
適切な成長とアライメントが形成される。
Cummings, GS, Tillman, LJ : Remodeling of dense connective tissue in normal adult tissues
なので、どんどん負荷かけていきます、過負荷にならないように。
この時期に、”痛みありません!!”
って言われること多いです。
そういう時には、片脚ジャンプとかで左右差を確認
負荷をかけて左右差が著明であれば、復帰は許可しません。
OKC,CKCともにです。MMTで差がある場合はなおさらです。
“引退試合なんです!!”って言われたら許可しますけど(笑)
また、アライメント・動作修正も同時に行っていきます、代償で動きが出ないように。
基本的にはfitness、補強までの復帰に留めます。
腫脹や外傷、固定などをしていた場合は、遅筋線維の萎縮が進みますので、
筋持久力が落ちます。
それを回復させてから復帰させたいと考えています。
これが3つ目の痛みなし=完全復帰を否定する理由です。
再構築期
この時期になるのかわかりませんが、
増殖期でのfitness,補強によって左右差が消失
もしくは、健患比80%(コンタクトスポーツは90%)で完全復帰
スポーツ復帰の文献紹介
Return to Play After Hamstring Injuries: A Qualitative Systematic Review of Definitions and Criteria
このレビューでは、ハムストリングス損傷後の復帰ですが、
RTPの基準として、
・損傷前と同等の筋力・柔軟性レベル
・痛みがないこと
・医療スタッフの許可
・機能的パフォーマンス
が、挙げられていたと、報告しています。
この文献は、膝外傷後の復帰として、
・筋力
・ホップテスト
・質問票
などを用いて、復帰の可否を決めることを推奨しています。
当然、それに至るまでには、無痛で片脚ジャンプができること、
歩行時の跛行がないことが前提として挙げられています。
おしまい
増殖期(亜急性期)にやる内容が多いです。
無痛であることは最低条件
そこに左右差や代償の有無などを考慮して復帰させていきます。
健患比クリアできれば復帰
そもそも、痛みなし=完全復帰を否定するのは、
過去にこれをやってしまったから。
“やっていい”と”できる”は別物
これをしっかりと意識するようにしています。



















